top of page

垂直の舞台を舞う「金の重力」。剥き出しの身体性を呼び覚ます、デジタル制御の祭壇

  • 15 時間前
  • 読了時間: 3分




【作品データ】

作品タイトル: バランス・アンド・トラップ / BALANCE AND TRAP

制作年: 2024年

素材: コンパネ、2x4材、ロープ、滑車、PIC、メダルホッパー、コインメック、モーター、DFPLAYER、アルミフラットバー

サイズ: 筐体:900x1800mm / コントロールユニット:400x400x500mm






内容: 筐体上部の滑車と、そこに掛かるロープ、そしてボールが乗ったアルミバーの寄り。2x4材の質感と、物理的な機構の「剥き出し感」をマクロ撮影で捉える。






【コンセプト】

「大きく作ることで、人は圧倒される」。1.8メートルもの巨躯を持つ本作は、指先だけで完結する現代の遊戯性への挑戦状である。プレイヤーはロープを介し、重力と対話しながらボールを導く。倍々ゲームという欲望の罠を潜り抜けた先にあるのは、単なるメダルの払い出しではない。利便性と引き換えに忘却された「身体的な感覚」と、失敗から最適解を導き出すという、人間が本来持つ根源的な学習体験の再獲得である。






【ステートメント】

現代のゲーム体験は、スクリーン上の記号を指先でなぞるだけの、極めて抽象的な行為に収束しつつある。かつて10円玉を弾く指の加減や、レバーを倒す絶妙な力加減に一喜一憂したあの「身体的な手応え」はどこへ消えたのか。

本作『バランス・アンド・トラップ』において、プレイヤーは1メートルのバーを操るため、腕だけでなく身体全体を前後に動かすことを強要される。それは、単なる入力作業ではなく、物理法則との泥臭い交渉である。
















私はマジシャンとして、常に観客の「記憶のトリガー」を探っている。スリが気づかぬうちに財布を奪うなら、マジシャンは気づかぬうちに「驚きというファンタジー」を植え付ける。この作品もまた、一つのマジックである。ホームセンターに並ぶありふれた素材で組み上げられた「手作り感」という意図的な油断。その裏側で、中古のメダルホッパーとPIC制御、そして煽り立てるBGMが、プレイヤーの射幸心を巧妙にハックする。

「遊びたい」という欲望そのものが最大のトラップ(罠)であり、その罠に足を踏み入れた瞬間、プレイヤーは自身の身体能力の限界と向き合うことになる。一回の失敗で去るか、身体を動かす「気付き」を得て再挑戦するか。このデバイスは、現代人が失いかけた「手応え」を計測する、一種の身体的リトマス試験紙なのだ。






【キュレーターズ・ノート】

本作は、現代社会における「遊戯」の定義を再構築する三つの重要な文脈を内包している。

第一に、**「祝祭的エンターテインメント」**としての強度である。大人の身長をも凌駕するスケール感は、単なる視覚的インパクトを超え、その場に居合わせた傍観者を「観客」へと変貌させる。成功と失敗が公共化されることで生まれる応援やコミュニケーションは、日常の壁を破壊する祝祭性を帯びている。

第二に、「技術と素材の再定義」。汎用的な建築資材という「既存の技術」に、デジタルな制御システムを水平思考的に組み合わせることで、低コストでありながら高度な心理戦を実現している。これは、最新技術の誇示ではなく、使い古された文脈をいかに鮮やかに転換するかという、知的アプローチの賜物である。

第三に、**「視覚的レトリックとユーモア」**だ。一見するとノスタルジックなゲーム機でありながら、その実、プレイヤーを「身体的な学習」へと誘い出す教育的装置として機能している。この「遊びに見せかけた、身体性の覚醒」という構造的な裏切りに、たかお晃氏特有の知的で遊戯的な対話の姿勢が見て取れる。






内容: 筐体裏側のPIC制御基板や配線、ヤフオクで手に入れたというメダルホッパーが収まった内部。表側の「アナログな祭り」を支える「ゴリゴリのデジタル」を対比的に見せる。












コメント


bottom of page