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永久に純白を汚し続ける、演算された情動。「対話」を喪失した現世に放たれる、AIによる愛の定型文(ルーチン)

  • 15 時間前
  • 読了時間: 3分



展示室の静寂の中に、1800mmの間隔を空けて向き合う男女の石膏像。ライティングで強調された、その「絶望的なまでの距離感」を捉えた全景カット。





【作品データ】

作品タイトル: 愛囁 / AI-SASA 制作年: 2024年 素材: 石膏像、Raspberry Pi、サーマルプリンター、Wi-Fi、生成AI、木製台座、ゴミ箱 サイズ: H1800 × W2500 × D600 mm(設置レイアウトに準ずる)



石膏像の口元に仕込まれたスリットから、白い感熱紙がヌルリと這い出てくる瞬間のアップ。古典彫刻の肌質と、安価なレシート用紙の質感のコントラストを強調。



【コンセプト】

現代において「対話」はコストとなり、傷つくことを恐れる人々はパーソナルな殻に閉じこもる。本作は、古典的造形美の象徴である男女の石膏像が、AIによって生成された「愛の囁き」をWi-Fi経由でリレーし、サーマル紙として排出し続けるインスタレーションである。人間が放棄し始めた熱量の高いコミュニケーションを、機械が無機質な石膏の口から永遠に垂れ流すという、滑稽で皮肉なディストピアを提示する。






【ステートメント】

本作の構造は、祈りの言葉を可視化した前作『ハレルヤ』の機構を継承している。1800mmの距離を隔てて対峙する男女の石膏像は、独立したマイクロコンピュータによって接続され、リアルタイムで互いのセリフを生成・応答し続ける。

特筆すべきは、その「バカバカしさ」の演出である。恋愛を「面倒」と切り捨てる現代の風潮に対し、機械たちは一切の躊躇なく、熱烈で、時に支離滅裂な愛を囁き合う。口から吐き出される感熱紙は、二人の閉じた世界が生み出した「排泄物」であり、そのまま足元のゴミ箱へと捨てられる。



観客が足元のゴミ箱を覗き込み、捨てられた「愛の言葉(プリントされた紙)」を手に取って読んでいる後ろ姿。プライバシーを覗き見ているようなアングル。




私は、スリが財布を盗む瞬間の鮮やかさと、マジシャンがハトを出す驚きは同質であると考える。本作においても、Wi-Fiという不可視の技術を、あえて「石膏像が喋る(プリントする)」という極めてアナログで即物的な視覚体験へと翻訳した。鑑賞者はゴミ箱を漁り、他人の(あるいは機械の)秘め事を持って帰るという背徳的な遊戯に巻き込まれる。これは実害のないファンタジーであり、同時に現代人のコミュニケーション不全を撃つ鋭利なトリガーとなるだろう。






【キュレーターズ・ノート】

本作は、三つの重要な美術史的・文化的文脈を内包している。

第一に、**「祝祭的エンターテインメント」**としての側面である。高尚な石膏像にサングラスをかけるような「微弱なずらし」のテクニックは、アートの難解な壁を破壊し、観客を理屈抜きの驚きへと誘引する 。


第二に、**「技術と素材の再定義」**である。枯れた技術であるサーマルプリンターや、ありふれた石膏像という素材に対し、AIという現代のスパイスを加える「水平思考」的アプローチによって、無価値な紙屑を「愛の痕跡」という新たな価値へと転換させている 。


第三に、**「視覚的レトリックとユーモア」**だ。完璧な美を誇る石膏像が、絶え間なく紙を吐き出し続けるという構造的な皮肉。この視覚的な裏切りは、鑑賞者との間に知的な対話を生み出し、現代社会の歪みを笑い飛ばす装置として機能している 。



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